社会保障と雇用を繋げるアクティベーションという考え方

前回のブログ(http://japo-kenny.hatenablog.com/entry/2017/02/27/101440)ではNewspicksをはじめとしたSNSを通じてたくさんの反響をいただきました。ありがとうございました。

 

ベーシックインカムの実現性について

その中で、ベーシックインカム(BI)の実現性に関して疑問のご指摘をいただきました。特に、所得が保障されたところで本当に人は働くのかという疑問はごもっともだと思っています。

さらに、働かなくなるのであればそもそも所得税での財源確保は難しくなり、持続可能ではないとも考えられます。(先日ビルゲイツがロボット課税を提案していたように、所得税を代替するような財源確保は考えられますが、今回はいったん置いておきます。)

確かに、唐突にBIを導入すると混乱が起こってしまうでしょう。

 

条件付BI、アクティベーションという考え方

しかし、BIが理念とするもの、すなわちすべての国民に最低限の生活水準と自己実現を可能にする社会保障の制度作りを目指しつつ、段階的にBI的政策を導入していくべきだと私は考えます。

最初は、条件を細かく設定したり、給付額も限定的水準にとどめつつ、ゆっくり社会に浸透させていくのはどうでしょうか。

つまり、文字通りのBIだけではなく、より広義のBI、つまり条件付の給付等も考慮に入れて議論をしていくべきだと思うのです。最低限の生活水準と自己実現の保障を行うということに関しては社会保障の共通目標なのではないでしょうか。

 

その一例として、宮本太郎氏の『社会保障 排除しない社会へ』で北欧・スウェーデンやヨーロッパで適用されているアクティベーションという考え方があったので、紹介したいと思います。

一言で言うと、社会保障を人々の雇用へとつなげる、労働・社会参加を促すという意味でアクティベーションと呼んでいます。

政策として以下の様なものが存在するそうです。

  • 柔軟な労働市場を通じて労働の流動化を可能にする代わりに、長期(最大4年間)にわたる失業手当(従前所得の9割)を給付する。
  • デンマークでは、コンブクスという生涯教育の機会が充実している。就労者が学び直す機会として教育休暇制度などがある。
  • ハイロードアプローチ:スウェーデンでは人々が知識不足を乗り越えて低付加価値分野から高付加価値分野へ移っていける様に、労働市場の外で知識・技能を身につける機会と資金を提供する。
  • スウェーデンのフリーイヤー制度:3ヶ月以上1年以下の仕事の離脱期間に失業手当の85%を給付する。

上記のもの以外にもたくさんあるかと思いますが、すべてに共通していることは、働くということを促しているという点です。

前回のブログでたくさんの方々からフィードバックをいただいたように、所得が保障されて人々がよりクリエイティブな領域で遊ぶことを働くことに変えていくという視点は理想郷じみた考え方であり、現実はそんなに甘くはないのかもしれません。

そこで、より現実的に最低限の所得と自己実現を可能にするために社会保障と雇用をつなげるアクティベーションを提案しています。

言い換えると、労働市場をいったん離れて自己実現や働く条件の改善を図るために自らを磨く時間を設けるための現金保障や公共サービスを充実させるということです。

 

日本版BIの追求

私が実現したいのは、仕事に対するやりがいや生きがいを見出すことができる社会です。その手段としてBIという考え方がありますが、それは必ずしも無条件の給付を意味しないのかもしれません。日本にあった形の日本版BIの設計を今後も議論していきたいと思っています。

今回も厳しいご指導をお待ちしております!