仮想通貨投資を投機以上のものにするために

 
 
前回「Bitcoinがバブルでない理由」というブログを書いてから半年弱も経ってしまいました。
 
前回のエントリー以降、ビットコイン価格は乱高下を続け現時点(2018年3月5日)では120万円台前半を推移しています。(9月ごろには40万円程度だったと記憶していますが、概ねそんな感じですね。)
 
その間に、2017年末の仮想通貨相場のバブル的急騰や、コインチェックのNEM流出事件など様々なイベントがありましたが、僕自身リサーチを続けていく中で仮想通貨に関して少しずつ整理がついてきたのでここで共有しようと思います。
 
 
前回のエントリーで僕は「ビットコイン決済手段として優れている」という主旨の主張をしていました。
現状のビットコインは取引の承認スピードが遅く決済としては到底使い物にならないということがわかっているので、少し見当違いなことを書いてしまっていましたね。
 
今回は、特定の銘柄を推奨するのではなく、仮想通貨市場を考える上でのフレームワークを提示したいと思います。
具体的には価値の保存手段としての仮想通貨決済手段としての仮想通貨新たな経済システムとしての仮想通貨という三つの側面から仮想痛市場の動向を考察していきます。
 
 
  1. 価値の保存機能としての仮想通貨  
 
前回のエントリーではビットコインを推奨する内容を書きましたが、正直ビットコインにはこれ以上にワクワクしていません。上記の通り、取引の承認スピードの遅さ(10分に1回)やスケーラビリティの問題(取引量が増えた時に処理能力が追いつかない現象)から、決済としてビットコインが普及するイメージはできません。
しかし、ビットコインには先行優位性があり、20兆円を超える市場規模は無視できません。
よく考えるとすごいことで、担保となる物理的な資産が皆無であるビットコインに対して20兆円以上の資金が集まっているのです。
実際に価値があるかどうかは別として、それだけ価値があると認められているということになります。
 
ところで、古典的には通貨には、①「交換の手段としての機能」、②「価値の尺度としての機能」、③「価値の保存としての機能」の三つの機能があるそうです。
それぞれの説明は省略しますが、ビットコインは③の価値の保存機能を担うようになるのではと思っています。
 
多くに人から価値として認められていて、且つブロックチェーンの技術によって改ざん不可能性とプライバシー(匿名性)が確保された資産としてビットコインは、価値の保存機能を果たす通貨として適していると思います。
つまり、自分の持っている価値が価値として認められていて流動性がある、またその価値が盗まれない(改ざんされない)、自分の財産に関する情報を暗号化してプラベートに管理することができるという特性を持つビットコインは価値の保存機能を十分果たしうると思うのです。
 
 
  1. 決済手段としての仮想通貨
 
決済の手段として仮想通貨が、既存のクレジット決済などのシステムをリプレイスするには多くのハードルが存在すると思っています。その主な理由は仮想通貨の承認スピードの遅さです。
承認スピードが早いとされるリップルネムでさえ既存のシステムと比べると劣っているのが現状です。一秒間に処理できる取引数を比べると、ビットコインは14件程度、リップルは1500件程度、ネムは4000件程度、VISAカードは4000-6000件程度と言われています。
もちろん、仮想通貨は一部のものを除いて仲介業者が存在しないので、手数料がかからないという利点はあります。しかし、処理スピードは決済における利便性に大きな影響を与えるのではと思うのです。
つまり、日常的な決済手段として仮想通貨が成立し得るのはさらに承認スピードを向上させ、且つ流動性を高める(市場規模を拡大させる)必要があるので短期的には実現は難しいかと。
 
一方で、国際的な送金システムにおいてのブロックチェーンの技術への需要は短期的にも高まるのではないでしょうか。現状の決済システムでは海外に送金するためには複数の金融機関を通さなくてはいけず時間も手数料もかかります。P2Pの決済システムであるブロックチェーンを使えば、個人間が直接決済(国際送金)できるので、手数料や時間を節約するとともに、為替リスクなども考慮する必要がなくなるのです。
 
 
  1. 新たなビジネスモデルを構築するDApps
 
僕が最も期待を寄せているのがイーサリアムなどに代表される非中央集権的・分散型アプリケーション(Decentralized Application, 以下DApps)と呼ばれる仮想通貨です。イーサリアムの他にはリスク(Lisk)やWavesなどのプロジェクトがDAppsに分類されます。
DAppsはブロックチェーン技術を活用した分散型アプリケーションです。DAppsの特徴は、中央主権的な管理者がいないということです。
例えば、AirbnbUberなどのアプリはAirbnbUberといった中央集権的な管理者(企業)が存在していてユーザー同士のマッチングやシステム上の監視などの業務を担っています。
一方、DAppsでは管理者は存在せず、ユーザー同士が資産の貸借・売買などの取引を直接行うことが可能です。DAppsは中央集権的な管理者・企業が独占してきた利益をにユーザーに還元することができます。
現状では、Airbnbなどの企業はユーザーから多大な手数料を搾取(言葉は悪いですが)して、利益を独占している状態です。そのパワーを個人に返そうという動きです。
 
もう一つの特徴は、スマートコントラクトという技術を組み入れているという点です。スマートコントラクトは、特定の取引が特定の条件の下で自動的に履行されるプログラムを指します。例えば、Uberの場合、ドライバーがユーザーを目的地に安全に送り届けたという条件を満たした場合のみ、自動的に決済が行われる、というイメージです。
DAppsではこの条件が中央集権的な管理者の介入なしに各個人によって好きに決められるのでユーザーは柔軟な形でサービスを提供し対価を受け取ることができます。
このスマートコントラクトの技術はアプリ開発との相性がよくDAppsの開発に応用されています。
 
 
 
今回は、1. 価値の保存機能としての仮想通貨、2. 決済の手段としての仮想通貨、3. 新たなビジネスモデルの構築する手段としての仮想通貨という具合に、仮想通貨を分類・整理してみました。
このように、仮想通貨・ブロックチェーンが実現する未来をシナリオ別に検討してそれぞれのシナリオで有望なプロジェクトに資金を貼って長期保有していくことが大事なのではないでしょうか。
 
「仮想通貨は投機だ」などと頭ごなしに否定するのではなく、ブロックチェーンという技術を研究してその技術が実現する未来に長期的に投資していくことが、我々個人投資家に求められる姿勢ではないでしょうか。